Mazoga the Orc


先のScampの杖の一件で走り回っていた折、街中で変な噂を耳にした。

何でも「Mazogaという名の、『自分は騎士だ』と主張するオークが城に居座っている」と言う物で、この街の領主は不審がっているのだそうだ。

・・・本来この街へ来た目的だったはずの戦士ギルドの仕事はさっぱり手付かずのままではあったが、生まれてこの方見た事も聞いた事もない「オークの騎士」殿を一目見てみたい、と言う己の好奇心にはどうしても勝てなかった。


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“彼女”がMazoga。 あってみて驚いた事に女性だった・・・まあ私も女だてらに重装着込んでメイスやら長剣振り回してる身なので他人の事は言えたもんじゃないですが。
しかも私よりも上等な鎧一式が揃ってたりするし。





そのMazoga、会って私に向けての最初の一言が「伯爵様であらせられますか?」だった。 一目見ればこの街の領主でない事くらい分かりそうなもんだが。
私は丁寧に「いいえ」と答えて見せたところ、「じゃ、どこかへ行け。」と・・・なにぃ~!?口の聞き方の一つや二つ、力づくで教えてやろうか知らん、と剣に手が掛かり掛けたがここはひとつぐっと我慢しておいた。
何しろ初めて訪れる街の城内でいきなり大立ち回りを繰り広げようもんならたちまち出入り禁止とかの憂き目に会い兼ねないだろうし。



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そんなこんなで不遜な“自称”騎士様とはとっととお別れし、この街の領主殿にご挨拶に伺ってみた。
彼は初対面の私でも丁寧に迎えて下さり、そして「我がLeyawiinの為に一肌脱いでもらえんか?」と言ったのだった。

どういう事なのか尋ねてみると、先程の“自称”騎士のMazogaが城内に居座り続けてる事が気になっている様子。
彼女の本当の目的を知りたい、というところか。 それを私に突き止めて欲しい、と言った。


・・・お預けにしたままの戦士ギルドの仕事は気になりつつも、ここでもどうしても自分の好奇心に抗い難かった・・・私も何故か無性にMazogaが気になっただけの話なのだが。

私はその申し出に首を縦に一つ振り、当の本人に直接聞いてみる事にした。
回りくどいやり方は苦手だし、何よりそれが一番手っ取り早い。



○○の一つ覚えの様に彼女は私に向かって「伯爵様であらせられますか?」と聞いてきたので、「伯爵に頼まれて来たの。」と答えて見せた。

『伯爵』の名の効果は絶大だった。
ただ・・・やはり彼女は他人に対して口の聞き方を知らなかった。

「お前は騎士との接し方を知らないだろうから教えてやろう。 『Yes Sir、Mazoga』と言えばいい。」

Sir? あんた女でしょ、とツッコミを入れてみたが「私は騎士だ。 『Sir』と呼んで欲しい。 言うんだ、『Yes Sir、Mazoga』と。」
この一点張り。

・・・はいはい。 反論する事すらアホらしいので、強情なオーク女に付き合って答えてやると、「これからは忘れるな。」更に追い討ちを掛けられた。
さすがに若干殺意が湧いた・・・こらえろ、自分!


何とか自分の怒りを抑えつつ、Leyawiin領主の願いを思い出す。
“騎士”と名乗る以上、仕え、守るべき主君がいるはず。
この手の輩には長々と回りくどく話するとさっぱり通じないだろうから極めて簡潔に質問する事にした。 すると彼女は

「私は流浪の騎士だ、主もいない。 どこで騎士の話を聞いた?」と逆に質問を返された。
私は若干の皮肉を込めて「No, Sir Mazoga。」と返すと「それでよし。」と・・・これは一筋縄ではいかないな・・・はぁ。


Mazogaは唐突に話を切り出した。

「この街にWeebam-Naという名のArgonianがいる。 探して欲しい。」


・・・はっきり言って、この時点でもう付き合い切れない、と感じたのだが、Leyawiin伯爵の願うところの『Mazogaの真の目的を探る』ところには至っていない。
私は無言で城を後にした。



向かった先はWeebam-Naの家。
外はひどい嵐掛かっていた。


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右がWeebam-Na、左が奥さんの様だ。
取り込み中だった様だがこちらも早々にケリをつけたいのでやや強引に話に割って入り、早速彼にMazogaの話をし、一緒に来るように求めてみた。

だが彼は、



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「それで? オークが私に会いたがっているって? 俺にはどうでもいい事だ。
それに見ず知らずのあんたの顔を立ててやる程の義理はない。
一緒に行く気はないよ。」

・・・ごもっとも。 私はWeebam-Naとは初対面。
しかもMazogaとは面識すらないらしい。

初めて会う者から「あなたの友人でもない人があなたに会いたがってるから一緒に来てくれ」等と言われれば着いて来る方が普通じゃない。
ていうかむしろかなり失礼な話だ。
会いたきゃ会いたい方から出向くべきだわなぁ。

しかしMazogaにそう説明しても、とてもじゃないが納得するタマじゃないだろう。
ここは一つ『袖の下』作戦で。



「・・・わかった。 Mazogaというオークが私に会いたがって呼んでいるんだな?
私はその者を知らない。 本来ならこういう話は無視する方が利口だろう。
だが・・・私は利口であり続けたが得る物は何もなかった。
だから今回は、そのオークが私にどんな用があるのか位は確かめに行こうと思う。」

ほっ。 何とか了承してもらえた。
だけどMazogaがこのArgonianに何の用があるのかは私も知らなかったりする。

・・・一抹の不安が頭をよぎった。



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再びLeyawiin城内。

私はこの街のハンター、Weebam-Naを伴ってMazogaの元に戻って来た。



戻って来た我々を見つけてMazogaは開口一番こう言った。

「おまえがWeebam-Naか?」

「そうですが。」

「私はFisherman's Rockへ行きたい。 どこにある?」

「Fisherman's RockならLeyawiinから北へ6時間ほど歩いたところ・・・Niben東岸にあります。」

「私をそこに連れて行け。 今すぐに。 急いでいるんだ。」



・・・うわぁ。 何と口の聞き方を知らないやつ。
Weebam-Naもここへ来るのを了承した事を後悔しているに違いない。
呼びに行った私ですらそうなのだから。


Weebam-Naも、ただ「連れて行け」じゃ納得行かなかったのだろう。
「どうして?」と理由を尋ねたのだが、当のMazogaは

「お前には関係ない事だ。」

等と言い放った。



「あなたが私にきちんと説明しないのなら、どこへも連れて行く気になりませんよ。」

Weebam-Naの返答はもっともらしいものだった。
しかしそれに対するMazogaの反応は、私の予想を遥かに超えていた。



「地獄へ堕ちろ!」

ちょ、いくらなんでもそれはない。 口の聞き方を知らないにも程があるぞ。



果たして、二人の交渉は決裂してしまった。
Mazogaは私に向かって「Weebam-NaはFisherman’s Rockへの案内を拒否した。」と言った。
そりゃそうだろう、とツッコミを入れようとしたその瞬間、今度はそのターゲットを私に向けてきた。

「お前はそれがどこにあるのか知ってるか?」

まあ、今の話は聞いていたので、Mazogaと同じ程度の知識しかないよ。
Leyawiinから北へ徒歩6時間、Nibenの東岸・・・だったろ?

「すぐにそこへ連れていってくれ。」

いや、だから知らないって。

「Mogens Wind-Shifter。」

ん?

「奴はFisherman's Rockで野営している。 だから私をそこへ連れて行け。
私が奴と話をする間、何が起こるかを見ていろ。
聞いてるか? 始めに私が奴と話をする。
奴の歯を叩き折るのも首を切り落とすのもなしだ、分かったな?」



・・・今ここでこいつの首を斬り落としたい衝動に駆られた。 すっごい駆られた。
私は既になけなしになってしまった理性を総動員してそれを押さえ込んだ。

行きゃあいいんだろ、行きゃあ。

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私はMazogaを伴って川沿いを北へ向かって歩き出した。
途中狩人が野生の鹿を射止めているところを目撃したり。



かなりの遠足だったが、ついにMazogaの目的地と思しき場所、Fisherman's Rockという地点に着いた。

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何か盛大に焚き火してますが。



Mazogaが何の目的でここに来たのかはまだ分からない。
ただ、ここにいると言うMogens Wind-Shifterに何らかの用がある事だけは分かっていたのだが。

Mazogaは正面切って、焚き火を囲む人の群れの中に進んでいった。
そしてMogensと思しき男と話を始めたのだった。



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「覚えているか? 私はMazogaだ。
お前は我が友Ra'vindraを殺したな。」

「あ? 何の事だかさっぱり分からんが?」

「貴様は下劣な嘘つきだ。 貴様はRa'vindraを殺した。 今こそその代償を払わせてやる。」

と、Mazogaはいきなり剣を抜き、Mogensと戦い始めた。
無論、その男の仲間と思しき連中は一斉に武器を構えた。

Mazogaは友の仇を討ちに来たのか・・・てかそういう事は先に言っとけ!
私には『私が奴と話をする間、何が起こるかを見ていろ。』としか言わなかったくせに!

成り行き上Mazogaの加勢をするハメに。



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相手は都合4名。
こっちも一人が二人に増えただけでは多勢に無勢ではあったのでScamp呼び出して応戦。



なんとか奴らを殲滅した。

結局Mazogaの目的とは、今戦った奴らに殺されてしまった友達の仇討ちだったって事か。



戦いが済んで一息つけた頃、Mazogaが話し始めた。

「私は誓った。 Mogens Wind-Shifterを亡き者にすると。
Mogens Wind-Shifterはならず者だった。 旅人を殺し、略奪を行っていた。
Ra'vindraはそれを目撃し、衛兵に通報したのだ。
MogensはRa'vindraを殺して逃亡した。
私の親友・・・Ra'vindraを。」

そうか・・・そんな事が。

「その日から私は騎士となり誓いを立てたのだ。
長きに渡って奴の行方を捜し求めてきた。
そして遂に奴がFisherman's Rockに潜んでいる事を突き止めたのだ。

お前は今、全てを知った。 そしてお前の助けを私は決して忘れない。
復習の誓いを果たせた。 私はそれで満足だ。」

「親友が殺されるのを見た時、私は正しき騎士となり、全ての悪を正す事を誓った。
だから今は世の為人の為に働いている。
実際の騎士の事など何も分からない。 しかし学んでみせる。

言ってくれ、『あなたは良い行いをした、あなたこそは本当の騎士だ』と。」


主なき騎士・・・本来ならありえない事象かも知れない。
が、このMazogaは善を成し、親友の無念を晴らすべく自らの誓いを立てた日から今日まで、自分の信念たる騎士たらんと生きてきたのだろう。

「Mazoga、あなたこそは本当の騎士だ。」
その苦労は並大抵ではなかっただろう。 その決意はこれ以上ないという程に堅かったのだろう。
それを理解できた今、本心からそう言える。



Mazogaは「ふっ」と笑顔を見せ、一人Fisherman's Rockを後にした。
去り際に背中で一言、

「お前は相棒だ。」

と言い残して。

初めは何と口の聞き方を知らない無礼者だろう、と思った。
確かに彼女は恐らく、本当に口の聞き方を知らないのだろう。
が、その根底にあるものは間違いなく自分の正義を武を以って貫こうとする騎士道なのだ。

それを理解できた今なら彼女の今までの言動も理解出来る範囲なのだ。
多少の包容力を持ち合わせる必要は伴うのだが。



・・・さあ、私は私でMazogaの真の目的をLeyawiinの領主に報告に向かおう。



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その夜、私はLeyawiinの伯爵の元へ訪れた。
伯爵は奥方や側近達となにやら会合中だったが、目ざとく私を見つけた伯爵に手招きされたのでそばに寄った。

「で、あのオークの事は何かわかったかね?」

私は、自分が知り得たMazogaに関する事を伯爵に説明した・・・Mazogaは殺された親友の仇を討つ為に騎士としてここLeyawiinを訪れたのだと。

それを聞いた伯爵は大変喜んだ。

「その様な仇討ちは高貴な行いだ。 Leyawiinは君の助力に対して感謝する。
そして私はその様な立派な行いに対して褒章を贈りたいと思う。

君と君の友人に申し出よう・・・遍歴騎士の称号を得たいとは思わないかね?」



な、何だってー!?



Mazoga the Orc -終わり-

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