Chorrolの「灰色の雌馬亭(Gray
Mare)」で、街外れで農業を営んでいるValus家の一件を親父さんに報告に行った際、朝から既に呑んだくれているもう一人の男がいた。
「お前とは前に1回話したって? 1000回くらいはしたってか?
俺はCheydinhalなんかにいた事はねえぞ! ・・・おい、待ってくれよ、あんたは違う奴か・・・。」
この男、名をReynald
Jemaneというそうで、何やら訳の分からない事をぼやき続けている。
話の内容はと言えば、彼はCheydinhalという街には行った事がないというのに、そこで自分にあったという人から頻繁に声を掛けられている、と言う事らしい。
で、誰か別人が自分のふりをしてるに違いないだろうから、そいつを探してくれ、コイツはその旅費だ、といきなり金貨50枚と一緒に野暮用を私に押し付けた、という次第。
で、どうせ戦士ギルドでの初仕事を得るために行かなくてはならない地だったので、自分の用事ついでにそいつを引き受ける事にした。
そんなこんなで、私は帝都から見るとChorrolからちょうど反対側に位置する街、Cheydinhalにやって来た。
門番にちょっと話を聞いてみたところ、「Reynaldって男は知らないがGuilbert Jemaneならこの街にいるよ。」と。 やはり全くの別人か。
しばらく散策がてら街中を歩き回ってみた。
街並みは洗練されている。 Chorrolよりも都会的な雰囲気がある。
人種は人間系が多いのは他の街とも変わりないが、ここにはOrcやDark Elfも数多く暮らしているようだ。
ただ、どうやらこの街の住人はよそ者を嫌う傾向が強いらしく、守衛さんや店員以外は皆一様にそっけない態度。
Orcに至っては「早く消えねえとその腕引っこ抜くぞ!」等と喧嘩売ってくる始末。 やれやれだ。
とそこへ通り掛った一人の青年。 どこかで見た様な・・・ってあれ? Reynald!?
「Reynald!? 生きて・・・生きているのか!? 母と兄弟はもう生きてはいないと聞いていたんだ! ああ、夢の様だ!」
彼の名前はGuilbert Jemaneというんだそうだ。
Reynaldの居場所だけ確認すると私との話もそこそこに
「すぐに会いに行こう!すまないけど失礼するよ!」と取る者もとりあえず街の正門へ向かって走り出した。
去り際に「僕らに会いにまたChorrolへ来て下さい、僕ら兄弟を再び引き合わせてくれた事に感謝します。」と付け加えて。
・・・とりあえずはめでたしめでたし・・・なのかな?
Guilbertは今の呑んだくれなReynaldを見てどう思うんだろうか。
そこだけはちょっと気掛かりになった。
それから数日後。
私はまたChorrolに戻って来た。
実はGuildbertとCheydinhalで別れた後、私は私で別件で帝都を目指して移動していたのだが、彼が狼に噛まれて四苦八苦しているところに偶然遭遇し、狼を追い払ってやってどうせ乗りかかった船、ついでにChorrolまで道を共にしたという次第。
Chorrolに到着し、兎にも角にもまずはGray Mareへ向かった。
恐らくReynaldは毎日そこで呑んでるに違いなかったからだ。
案の定彼はそこにいた。
早速は私はReynaldに、生き別れだった兄弟が面会に訪れた事を話した。
「何?兄弟? 勘違いしてる様だが俺に兄弟なんていた事はないよ。
もしかすると俺の方が勘違いしてるのか・・・もう1本ワインを飲めば思い出すかも。」
おいおい・・・。
「Guildbertよ、本当にに覚えがない?」
「んんん・・・かなり酔っちまった。 あんた誰だっけ・・・俺に兄弟がいる?どうしてそう言えるんだ?」
酔った意識の中ででも思い当たる記憶を見つけ出したのか、彼はまた話を始めた。
「俺の家族は遠い昔に殺されちまったんだよ。 少なくとも俺はそう教えてもらった・・・ああ、今日はもう呑むのをやめよう。
兄弟が俺に会いに来てる、そうだろう? うん、少し酔いを醒ました方が良いな」
私は頃合を見計らってGuildbertを店の中に招き入れた。
Reynaldは驚きの表情を隠さなかった。
「・・・そんなはずはない、兄弟なんていた事はなかった。一度も本当の家族なんて知らないんだ。
お前は誰だって? もう一度言ってくれないか?」
「俺は君の双子の兄弟だ。幼い頃、農場でオーガに襲われて私と父は逃れた。
俺はてっきり君と母は死んでしまったものだと思っていたんだ、そうとしか考えられなかったんだよ!」
Reynaldは答えた。
「旅商人たちが荒野で母の亡骸のそばにいる私を見つけたんだ。 そして私はWeynon Prioryに預けられ、修道士達に育てられた。
弟よ!再び会えるとは思わなかった、話したいことが山ほどあるんだ。」
・・・良かった良かった。
二人とも辛い目にあったんだな・・・孤児として育ったReynaldはなおさらだ。
酒に逃げちゃったんだな・・・。
彼らは二人で長い間、お互いに積もる話をしていた。
私は少し離れた席で、彼らの話が終わるのを待つともなくくつろいでいた。
・・・どれくらい経っただろうか。 Guildbertは席を立ち、私の元へやって来た。
そして彼は私に言った。
「またReynaldと会えるなんて・・・あなたには感謝してもし足りない。 彼がまだ生きているとは思ってもみませんでした。
二人で話し合ってみたんですが、もし時間が許すならもう少しここに留まって、私達が暮らした家のあったWeatherleahの話を聞いてもらえないでしょうか?
Weathleah・・・そこには何が?
「Weatherleahは私達の家族が何代にも渡って暮らした場所です。
私達の両親は、オーガが攻めて来た時にそれから逃れる為に離れ離れになってしまいました。
父は私を助けてくれました。 その後父と家へ戻り、Reynaldと母は死んでしまったと思ったのです。
オーガは食人種なので、父は母の遺体が見つかるとは思ってなかったのです。
しかし感謝すべき事は、母はReynaldが助かる様尽くしてくれた事です。
私達は、あの家に帰りたいのです。
そこでお願いがあります。
Weatherleahへ行き、あの家がまだオーガたちに占領されているか確認してもらう事は出来ませんか?」
ここまで来ればもう放っておく訳にもいかない・・・彼らの願いを聞き入れる事にした。
「ありがとうございます! ただ、屋敷がどこにあるのかはっきりとは覚えていないのです。
とりあえずわかっているのは、屋敷はChorrolの南で、Carmala砦よりは北にあるはずです。
簡単には見つからないでしょう。 誰も住まなくなって久しいので雑草に埋もれてしまっているかも知れません。」
なるほど、やるべき事はハッキリした。
が、手元にある情報はまだ余りに少ない。
しかしそれなりの長旅を経てここへ戻ってきたのだし今日はもう遅い。
また明日、街に出てWeatherleahについての話を聞く事にしよう。
Separeted at Birth -終わり-
・・・Legacy Lostへ続く
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