「捜査に進展はあったか?」
Cariusは未だBradon宅にいた。
私がRaynilの事についての話をし始めようとした時、彼はそれを遮って「一つだけ忠告しておこう。」と言った。
「Raynilの事を調べてErlineを助けたい気持ちは分かる気持ちだ。
しかしRaynilの身元については隣町の役人からお墨付きを貰っている。
だからお前が何を証明しようとしているのかよく分からんのだが・・・。
今回の調査についてだけは大目に見てやろう。 Erlineが取り乱しているからな、仕方あるまい。」
私はSkingradでRaynilがヴァンパイアとして始末したというGelebourneの名前を出してみた。 すると、
「なぜその事を知ってるんだ? ・・・職務上の機密を魔もてない奴が多過ぎる、全く。
Skingradの警備隊から報せは聞いている。 少し前にRaynilがGelebourneを退治したとね。
Gelebourneも同様にヴァンパイアだった、これは明らかだ。」
「私の意見は違うわ。」
「意見が違う? いったいどういう事だ? 大それた事を言うじゃないか。
Gelebourneがヴァンパイアでなかったという証拠でもあるのか?」
私はGelebourneの手記をCariusに手渡した。
それを手に取り、目を通すにつれ、彼の動揺は強くなっていったのだった。
「こ・・・これは何と言う事だ。 これで全ての謎が完全に解けた。
なぜRaynilはSkingradの犯行現場からこの日誌を持ち去ったのだろう?
鍵など持っていなかったという件も聞いている。
きっと我々が到着する前にRaynilがBradonの遺体から持ち去ったに違いない。
無実である二人の男が殺害されたとなると、私はそのうちの一人の死について責任を負わねばなるまい・・・私は・・・私は言葉もない。」
そして真実を明らかにするべくこれからの方針の変更を告げた。
「衛兵を招集し、街中で奴の捜索を開始する。
1時間後、Orav's Tap and Tackで合流しよう。」
と言い残し、彼はBradon宅を後にした。
一人取り残されたErlineにもGelebourneの名について尋ねてみたところ、
「ええ、Bradonがその名前を口にしていたのを覚えています。
彼はRaynilと一緒に結成した、ある集まりのメンバーでした。」
やはり間違いない。
RaynilはBradon、Gelebourneの両名と顔見知りだった。
後はRaynilから直接事情を聞くだけだ。
・・・奴は今、いったいどこにいるのだろうか。
それから約1時間後、約束どおりにOlavの店でCariusと会った。
「ここに付く直前に、街道の見張りから報告を受けた。
RaynilはBrumaの西方へ向かった。
見張りが追跡したが、山中で見失ってしまったとこの事だ。
西にある洞窟で、Gelebourneの日記の記述を合致するのはBoreal Stone Caveだけだ。
奴はそこに向かっているに違いない。
そこにあるアーティファクトとか言うのを奴が手に入れて脱出してしまう前に洞窟へ辿り着かねば。」
アーティファクトの隠し場所・・・か。
「衛兵はBrumaに待機させる事にする。 Raymilは我々が後を追ってくる事を知らないからな。
もし衛兵を見たらパニックを起こして逃げてしまうだろう。」
そして一際意を決した眼で私を見たのだった。
「今のところお前だけが唯一の希望だ。
頼む、奴に裁きを下す為ならどんな手段を講じてもかまわない。この私が全権を認めよう。
もし奴が降伏しなかったらどうするべきか分かっているな?
急いでくれ、一日もすれば奴を捕まえる事は出来なくなる。
・・・Raynilは両方の犯罪で罪を償う事になるだろう。
Gelebourneは奴の手に掛かったもう一人の犠牲者と言う事だな。
Skingradの警備隊には確実にこの事について知らせておくつもりだ。
その日の夜半過ぎ、Boreal
Stone Caveに到着した。
中に入ってすぐの広間に奴はいた。
「おめでとう。 早かれ遅かれ追いつかれるような気はしてたよ。
日誌を置いていったのはとんだ失敗だったな。
Olav's Tap and Tackに辿り着く前にお前が中に入るのを見かけ、Brumaからこっそり抜け出す必要があると悟ったのだ。
お前かCariusが嗅ぎ付けるのは時間の問題だったな。 気にするな。
お前を殺せばもうヴァンパイアハンターなどと名乗る必要もなくなったのだから。」
「・・・自首する気はないのね?」
「もちろん。 Cariusが街中の衛兵をここによこさなかったなんて驚きだな。
大群が押し掛けて来るものと思っていたのだが。
二つに一つだ。 お前と一戦まみえて自由を手に入れるか、或いは降伏して地下牢で朽ち果てるか・・・俺は自由を手にする方を選ぶがね。」
「最後のチャンスだぞ。」
「話は終わりだ。 俺かお前か、どちらか一人だけがここから出られると言う訳だ・・・地獄で会おう。」
Raynilは剣を抜き、こちらへ躍り掛かって来た。
・・・悪いが人相手の一対一なら負ける訳にはいかない。
私はアリーナのグランド・チャンプだ!
Raynilは口ほどにもなく、あっけなく崩れ落ちた。
懐からGelebourne、Bradonから強奪したものも含まれると思われる、3本の鍵を入手、その傍らにあった箱を開けると、粗末にしか見えないアミュレットが入っていた。
Bradonらが発見し、隠したアーティファクトとはとても思えない代物だったが、私はそのアミュレットを手に取り、Bradonの奥さんErlineの元へと向かった。
翌朝、Brumaの街に戻り、私はBradonの奥さんであるErlineの家を訪ねた。
「あのRaynilだと気付いてさえいれば!
もうずっと前の事ですが初めてBradonに会った時、彼を紹介してくれたのです。」
自首するつもりもなかったRaynilを滅ぼした事を伝えると、BradonとRaynilにまつわる話を教えてくれたのだった。
「彼らはある集まりのメンバーでした。
伝説の財宝だとか何かを探してCyrodiil中を放浪するとか何とか・・・。
夫がそれを続けなかったのは、私と結婚して落ち着いた生活がしたかったからなんです・・・Raynilのせいでその幸せな生活も奪われてしまいました。」
私は粗末と思えるアミュレットを彼女に見せてみた。
「昔、Bradonは私に言いました・・・これからお見せするものを、決して誰にも教えてはならないと。
しかしあなたは夫の不条理な死に報いてくれました。
Bradonもその誓いを破る事を分かってくれるでしょう。
Bradonはどこか遠い地からそのアミュレットをうちに持ち帰って、私に話しました。
彼は先の集まりの誰も信用していませんでした。
そして財宝を洞窟に隠す前に、これに特別なエンチャントを施したのです。
魔法でその品本来の姿を隠してあるのです。
ある言葉を唱えるだけで、そのアミュレットは本来の姿を取り戻します。」
・・・それは旦那さんしかご存じなかったので?
「いいえ、夫はいつもこの日が来るのを恐れていました。
夫が死に、私がアミュレットを受け継ぐような万が一の事態に備えてその言葉を私に残してくれました。
もしBradonのほかの仲間が生きていて、私が死の床についたら彼らに教える他ないものと思っていました。」
彼女はアミュレットを手に取り、一言こう言った。
「Brotherhood。」
すると、アミュレットはそれまでとは全然違う違う輝きを放ち出した・・・これがこのアーティファクト本来の姿か!
「アミュレットは元に戻りました。 昔見た時の様に美しくよみがえりました。
でももう私には必要ありませんので、あなたに持っておいて頂きたいの。
Bradonもきっとそう思ってるに違いありません。」
そしてアミュレットを手渡された。
「心から感謝申し上げます。 どこへ旅してもこのアミュレットはあなたを守ってくれると思います。」
Erlineの家を出た後、街中でCariusを見つけた。
私は彼のそばへ行き、事の経緯を話して聞かせた。
「君は成すべき事をしたのだ。
RaynilはあくどいDunmmerで、君はやるべき事をしたまでだ。
Gelebourneについてはあんたがいない間にSkingradに使いの者を走らせて、彼の名をヴァンパイアの記録簿から除外するよう通達を出したよ・・・Bradonと同様、彼にもまた汚名を晴らしてやるのが当然だと思ってね。
Bradonについてだが・・・過去には戻れないし、済んでしまった事をやり直す事は出来ないが、正義は護られたと思う。
Bradonの魂は安らかに眠るだろう。」
・・・彼自身、彼の出来る事はすべてやった、と言う事だろう。
私はそれについて礼を言い、彼とはそこで別れた。 別れ際、「法の番人として仕事をしたいと思った事はないか? はは。」
と笑ったが、私もただ笑顔でそれに答えたのみだった。
・・・いずれどこかに定住を決め込んだ折にはそういう選択肢もあるかも知れない・・・悪くはないかな、とも思った。
だが今はまだ、自分の好奇心を止められない。 止められないうちはまだまだ各地を巡ってみたい、そして様々な困難を乗り越えて強くなりたい、という思いがあリ続ける限り、私は旅をやめる事はないんだろう。
・・・そして今は、Erlineから受け取ったアミュレットを見つめ、ただBradonの冥福を祈るのだった。
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Brotherhood Betrayed (後編)-終わり-
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