Where Spilits Have Lease (後編)


翌日、Anvilの酒場でVelwynと落ち合い、早速屋敷へ踏み込んだ。



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邸宅内はまた亡霊達が彷徨っていた。
Velwynは逃げ腰で私の背中に隠れるのみ・・・まあ彼には元より戦力としての期待は一切していない。
今となってはこの男にしか開けられない『秘密の部屋』への入り口を見つけてもらいさえすればそれで良い。



地下室も亡霊でいっぱいだった。
やっぱりサクサクと浄化、とは行かず、已む無く長期戦覚悟で戦い続けた。
ペットに直接相手をさせている限りは、かなりの時間は掛かるものの負ける事はない。



ようやく見える限りの亡霊を叩き出し、例の紋様の描かれた壁の部屋まで到達。
Velwynにそこを調べさせた。

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しばらくその壁を調べるVelwyn。



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と、突然その壁が大きな音を立てて開いた。 おー遂に。

と思うや否やVelwynの野郎・・・

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いきなり一目散に逃げ出してしまった。
やっぱりか、まあ戦力としての期待は一切していなかったけど。
事の成り行きを見守ろうって位の気概くらいは持ち合わせてるかと思ったけど、もう性根が腐ってんだろうな、はぁ・・・。



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その入り口から中へ。
辺りは薄暗く、奥には広間がある様だ。


広間へ向かう通路の途中、大袈裟な机の上に放り出されていた大きな本は、開いた瞬間に気分が悪くなったので即、机の上に放置。
あれがVelwynの祖父、Lorgrenが魅入られたという死霊術の本?
その中身は血の手形と異様な紋章が描かれるのみだった。
あんなものに魅入られてる時点で、とてもじゃないが正気じゃない。



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広間には祭壇と思しき寝台があり、そこには白骨化した遺体が横たわっていた。
そばに近寄ると、その白骨は声ならぬ声で話を始めた。

「私はLorgren Benirus。 我が罪を償う機会を望んでいます。」

Lorgrenは、魔術師ギルドからの襲撃を受けた折、自らの遺体になんらかの魔術を講じたのだろう。
よく見れば祭壇の上の遺体には左手がない・・・恐らく日記と一緒に見つけた、壷の中に納まっていた手はLorgrenのものだったのだろう。

白骨と化したLorgrenは言葉を続けた。

「私がAnvilの人々にした事・・・言葉では言い表せない恐ろしい行いを、私は後悔しています。
Carahilは正しい行いをした・・・私を殺す事が、その狂気を止める唯一の方法だった、と私はそう受け入れたのです。

今、私はNineによる最後の平穏を得られるかも知れない、お願いです、私の手を体に戻してください。
それだけで私は完全になり、この永劫の悪夢も終わるでしょう。」



私は彼の話を信じるべきかどうか少々迷った。
だがもしそれが彼の今の本心なら、安らかに天に帰ってもらうべきだ。
そうでない場合は・・・私がこの手で滅ぼせば良いだけの事か。

私は壷の中の「手」を取りに戻り、それを祭壇の遺体のあるべきところに返した。



すると・・・Lorgrenの言葉がやけに力強く、そして邪悪な物へと変化していった。

「死に行く人間を操るのは簡単で、私を楽しませてくれる。

我が完全体へと至る手助けをしてくれた様だな。
かつてCarahilとその徒党どもが長年掛けて阻んできた道を・・・我が望みの不死者となる事を。

以前我が人間と戦った時、愚かにも我は奴等の力を見くびってしまった。
だが二度と同じ過ちを繰り返す事はない。



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・・・我は再び命を得た! ふははははははっ!!」

Lorgrenの遺体は燃え上がり、やつはリッチとして生まれ変わった。
このリッチ、何気に高位魔法のオンパレードでかなり痛い。
オマケに私のより強いホネまで召喚してくる・・・まあ“死霊使い”な訳だから死体も扱えるんだろうか。

しかしろくに対霊武器を持ってなかった事がここでこんなピンチを招く事になろうとは。
Agarmirの呪われた魔剣か、Chorrolの兄弟を助けた時に貰った冷気剣でも持ってくりゃ良かった、と後悔しても後の祭り。

おまけに自身の弟子座の生まれな事を軽く恨めしく思った・・・魔力への耐性が低いんだよね、Breton人の癖にさ。


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幸いにも広間はそこそこの広さがあるし、遮蔽物として利用できそうな柱が数本あったので、やられてもやられてもホネ君を召喚し続けてはそれと盾にし、自分は出来るだけ魔法をかわせる様に距離をとって、ありったけの銀の矢を射続けてやった。



「ガアアアアァァッ!」

やがてLorgrenの命運は尽きた・・・なかなかにジリ貧な戦いではあったが。



戦いが済んで、おぞましい地下室を出るとそこはもう「呪われた屋敷」ではなくなっていた。

さあ、逃げてしまったVelwynを探そうか。



そのVelwyn、案の定逃げ込んだ先は例の酒場だった。

「逃げてしまってすみません・・・あまりに怖かったので。
でも私に一緒に屋敷に行くよう説得してくれたのが嬉しかったよ。
うちの一族がやれなかった、呪いが取り除く仕事を手伝えたんだから。」

この男のした事といえばあの壁の入り口を開けただけ。
だがそれだけは彼でなければ出来なかった訳で・・・その他はさっぱり役に立たなかった上に、危うく私も亡霊の餌食にされかかったという点は大きく減点せざるを得ないんだけど。

「素晴らしい働きだった。
あの家があなたに末長い幸せを与えてくれます様に。
じゃあ私は帝都に戻るよ、さようなら!」

とだけ言って、いつもの様にまたさっさと出て行ってしまった。
最初から最後まで口先男だった・・・まあ全てが終わった以上どうでも良い事なんだけど。



という訳で、ようやくあの屋敷は私だけのものとなった。
これからはふかふかベッドで寝られるし、物置にも困らなくなったし・・・地下室の“アレ”は気味が悪いのでちょっと気にはなるけど、もう亡霊の類も出てこないだろうし。

我が屋のベランダから眺める事が出来た、久々に晴れ渡った空は最高の景色だった。

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Where Spilits Have Lease (後編) -終わり-