The Arena (前編)


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「強くなりたい」

先日のBravilでの行方不明だった人を、あと少しのところで救えなかったあの一件以来、自分の中でよりその思いが強くなっていたのだった。

ではどうすれば強くなれるのか・・・修行? 冒険?
私は、もっと手近にその方法の一つがある事に気付いた。 それが帝都の闘技場・・・アリーナだ。

ここには名誉と金を求めて命を掛けて戦うものが集う、まさに戦場。
血と金に飢えた観客が、そこで繰り広げられる残酷な命のやり取りのショーを我を忘れて楽しむ場所。

私はそんなアリーナという場所が大嫌いだった。
出来るなら近寄りたくないとも思っていた。



しかし・・・そこには『本物の戦士』も少なからずいるのだ。
洞窟にたむろする盗賊等の輩を相手にするのとは訳が違う、本当に死を賭して戦わねば勝ち抜き続ける事は出来ない・・・はずだ。

私はそこに自身を賭けてみたい、と思う様になったのだった。




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ある日私は、いきなり思い立ってここアリーナへやって来た。
入り口には世話役がいて、アリーナでのギャンブル、そして剣闘士として戦うための方法を教えてくれた。
元よりギャンブルに興味はない。 私は剣闘士達がスタンバイする為の地下へ降りた。


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この男はOwyn。 アリーナの剣闘士の手配をする者だ。

「俺はお前が何者かは知らん。 だが俺のBloodworksで何をしているか、10秒以内で言え。 さもないと上を切り落とすぞ。」

いきなりの物言いにしばし閉口。

・・・まあここに来ようって輩は大半が賞金目当てなならず者だろうから、私みたいなのはある意味場違いである事は否定出来ない。
しかしこんなところでグズグズしている訳にはいかない、私は「強くなる」と決めたのだ。

「アリーナの戦士の希望者よ。」

というとOwynは大笑いだった。

「何だ? コンバタントになりたいだと? ハハハハハッ! こいつぁ傑作だ!
俺のバアさんでもお前に勝てるだろうよ。 もっとも、バアさんはもう死んじまったがな!」

・・・この野郎・・・。 だんだん目の前のコイツに殺意を感じ始めた。

「まあいい。 お前はマジなのか? 家族はいないのか?
コンバタントになれば、最後は俺のRed Roomn内臓をブチまけて飾る事になるぞ。」

とOwynは前置きした上で、

「良かろう。 これがお前の葬式だ。 ようこそ、アリーナへ。 汚らわしいピットドッグめ。
戦闘の規則を守る限り、お前は自由に戦うことが出来る。

お前に戦闘着をやる。 これは全てのコンバタントのユニフォームだ。
軽装か重装か、どちらかを選べ。 これを着る時は誇りと共にな。
大事に扱えよ? お前が死んだら、他の自虐的なバカにそれを渡すんだからな。」

ここ、アリーナでのルールとは、

・頭、武器、盾装備、装飾品類、魔法の使用は自由。
・それ以外は先のアリーナ用戦闘着を着用。
・倒した相手からは装備を獲らない。
・闘技の実施は9:00~21:00

大雑把にはこれだけ。



まずは緒戦を戦ってみよう。 それでここで通用するかどうかの大体の見当は付くと見た。



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Owynの野郎に戦う意思を表明すれば闘技場へのゲートが開く。
後はそこから闘技場の鉄格子が開くのを待つだけ。

闘技場への通路は、剣闘士達の血で真っ赤に染まっていた。
負ければここを生きて帰る事は出来ない。 生き残るには勝つしかない。



緒戦はピットドッグ(アリーナでの最下級ランク)同士のカードだった。
これでもいろいろな修羅場を潜り抜けて来た経歴を掲げて来たのだ、簡単に負けてやるつもりはさらさらない。



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無事、緒戦突破・・・相手には悪いが思ったより全然骨がなかった。
これなら続いて先へ行けそうだ。



「Nine Divinesにかけて! やったな。 お前は思っていたよりも悪くないな、ピットドッグ。
これならランクが上がるくらいの試合はこなせるかも知れん。」

私の緒戦の戦いぶりを見て、Owynも見方が変わったのか。



緒戦勝利の報告を済ませた私は、Owynの立っているすぐ横に、クシャクシャに丸めて捨てられている手紙を見つけた。



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・・・。

これが丸めて捨てられている時点でOwyn自身は認めていないのだろう。
脳筋オヤジにも一夜のロマンスがあった訳か・・・。



この手紙の差出人、Branwenは意外にもかなり近いところにいたのだった。



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緒戦をこなしたその日の夜、アリーナが閉まってから事だった。
けなげにも彼女はアリーナのすぐ外で格闘術の練習に明け暮れていたのだった。

・・・いつかあの脳筋オヤジにも認めてもらえると良いね。



The Arena (前編) -終わり-